第28回JTF翻訳祭登壇資料

今年も参加しましたJTF翻訳祭。.゚+:ヾ(*・ω・)シ.:゚+。

2017年は10分登壇に応募しましたが、2018年は思い切って一セッションまるまるお時間(90分)をいただき

「翻訳業を営む個人事業主向けの適正な会計処理について」と題して登壇してまいりました。

僕は訳に直結するような内容での登壇は自信がありませんが、もっと周辺の事務的なこととかであれば話ができるかなと思い今回は最近個人事業を始められた方向けに翻訳業に係る普段の会計処理について(僕も税理士や会計士ではないので)経験談を具体的に共有する形で話をしました。スライド自体はたくさんあったんですが、割と早く終わり、最後の方は質疑応答をたくさん取ることができました。たくさん質問もいただいたので90分ちょうどよく使い切れたと思います。

本日の登壇資料は本ブログにアップロードしていますのでこちらからダウンロードしてご覧ください。※単式簿記についても簡単に触れていますが、あくまで一例です。白色申告か、発生主義で処理をするのか、青色申告で条件に該当する場合には税務署に申告のうえ現金主義で処理をするのかなどで処理の仕方は変わりますので、不明な場合は税理士や税務署によくご確認ください。

来年、セッション公募があったら何をネタに話ができるか考えてみよう。

2018/10/28 追記:

セッションのとき、そういえば売上の記帳について役務の提供は請求日ではなく納品基準で計上と根拠も示して話し、売掛金の受け取りまで仕訳例に触れはしましたが、仕訳はどれも単一取引のみで複数取引を扱って説明しなかったのでここで一つ追記整理しておきます。

確かに納品日ごとに売上を計上しますが、小さな案件を扱うことが多い方は特に、請求をある程度まとめてするので、売上計上は一つ一つでも売掛金の受け取りは複数分をまとめて受け取りますよね。

このとき、先般の売上ごとにちまちま入金処理(売掛金が減って預金が増えるなど)を一つ一つ仕訳するのではなく、その日にまとめて受け取るので入金処理は取引先ごとに合計額を仕訳しても構いません。ただし、摘要にはどの売上分が含まれているかは明記しておかないとわかりませんね。オンラインソフトで摘要欄の文字数が制限されている場合は工夫が必要です。

以下例です。

1. 2018/10/1に12000円分の翻訳成果物をA社に納品した。
2. 2018/10/3に2000円分の翻訳成果物をA社に納品した。
3. 2018/10/14に150,000円分の翻訳成果物をB社に納品した。
4. 2018/10/17に30,000円分の翻訳成果物をB社に納品した。
5. 2018/10/29に200,000円分の翻訳成果物をA社に納品した。
6. 2018/10/31に上記納品分の請求書を会社別に作成し、それぞれ請求した。
7. 2018/11/10にB社から10月請求分の入金があった。
8. 2018/11/15にA社から10月請求分の入金があった。また、A社は振込時に銀行振込手数料324円が差し引かれている。
備考:両社ともに入金時に10.21%の源泉徴収が差し引かれていた。(小数点以下の切り捨て、切り上げ、四捨五入は先方によって異なります)

単式簿記(売上については原則発生主義。現金主義を選択している場合、お金に動きがあった時だけ記帳。以下は現金主義での例

仕訳対象(上記例の番号) 日付 勘定科目 金額 摘要
7 2018/11/10

売上

事業主貸

180,000(入金)

1,838(出金)

B社10月請求分(10/14, 10/17納品分合計)
8 2018/11/15

売上

事業主貸

213,676(入金)

2,185(出金)

A社10月請求分(10/1, 10/3, 10/29納品分合計)

*売上値引(振込手数料分)324円あり。

※8の源泉徴収は元の214,000円に対して計算されると思われます。

複式簿記

仕訳対象(上記例の番号) 日付 借方 貸方 摘要
1 2018/10/1 売掛金 12,000 売上 12,000 A社納品
2 2018/10/3 売掛金 2,000 売上 2,000 A社納品
3 2018/10/14 売掛金 150,000 売上 150,000 B社納品
4 2018/10/17 売掛金 30,000 売上 30,000 B社納品
5 2018/10/29 売掛金 200,000 売上 200,000 A社納品
7 2018/11/10

普通預金 178,162

事業主貸 1,838

 

売掛金 180,000

(貸方も行ごとに

仕訳しても良い)

B社10月請求分(10/14, 10/17納品分合計)
8 2018/11/15

普通預金 211,491

事業主貸 2,185

売上 324

売掛金 214,000

(貸方も行ごとに

仕訳しても良い)

A社10月請求分(10/1, 10/3, 10/29納品分合計)

※1: 売掛金は大体補助科目に社名などを用いて細分化して管理すると思います(手記帳だと売掛金/得意先元帳とか)。A社・B社の入金日が同じ日になってもわかりやすいように別々に仕訳しましょう。

※2: 先方が支払う際に売掛金の支払いから銀行振込手数料を差し引く行為は色々な仕訳方法があるようです。[売上] がなかったとして処理するのではなく、[支払手数料] 勘定を用いて処理する方法もあれば、[売上値引] という勘定を設けて処理する方法など。消費税納税義務者の方はこの処理の違いに影響を受けるので特に注意が必要ですね。ここは税理士の方々は意見が分かれるそうで、相談される税理士によって違う回答があると思われます。まぁ、一番は居住する地区管轄の税務署に「答えて」もらうのがいいかもしれませんね、もちろん担当者の名前と回答日もメモして。でも僕は『厳密に言って自分が支払った』わけではない(受け取る前に差し引かれている)この振込手数料が [支払手数料] で処理されることに違和感がある(という意見もある)に賛成なので、[売上] から差し引くようにしています。日本は民法第485条で『別段の意思表示がない場合は』弁済に掛かる費用は債務者が負担することとなっているようですが、国内については僕はまだ振込手数料の負担はないかな。報酬の振込に際し手数料を差し引くとエージェントが契約書に明示しているところがあるんですよね、特に海外。海外は契約書の修正を主張することにあまり良い反応はされないと思いますが、国内はこの第485条のこともあるしそこを敢えて明示して受取人負担ってしてくるんでしょうね、「契約書読んだ?受取人負担って書いてあるでしょ」って。契約時に思い切って負担したくない旨を主張してみるのもビジネスの駆け引きだと思います。